奈良ひとまち大学

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未来につながる空

●レポーター:ならそら実行委員会 代表 やまもとあつし さん

オーディションやスカウトを経てデビュー。売れっ子プロデューサーに見染められ、ヒット曲を2~3曲飛ばし、武道館やドームでコンサート。テレビの歌番組にも出て・・・そんなサクセスストーリーは、遥か昔のおとぎ話になってしまった。ここ数年、音楽業界は舵の壊れた難破船のように、ただただ時代の波に弄ばれながら漂い続けているかのように見える。東京主導ではない地域発の、新しいスキームは生まれないものか?そんなことを考えているときに出会ったのが彼女だった。

<歌っている自分だけではなく、仲間や応援してくれる人たちとともに、地元から歌い続けていきたい>
奈良にもこんな人がいるんだと、なんだか無性に嬉しくなり、彼女の活動を応援しようと心に決めた。健気にも無欲に活動に取り組むその姿に、ひとすじの光を見た気がしたのだ。

ひとまちレポート 未来につながる空1

<大好きな奈良から大好きな歌を>
1曲目はアルバム「はなうた」から「花が咲いた」。
今日のステージは「はなや北川」、彼女のご両親が経営するカフェ、いわばホームである。ただしライブではなく「奈良ひとまち大学」の授業。集まった14人の学生(参加者)たちは様々。親子や夫婦で参加している人もいる。
今回のテーマは「愛し愛されたい! わたしたちの奈良 ~『びえんな~ら』で奈良再発見~」。サブタイトルにある「びえんな~ら」とは、彼女が仲間たちと昨年から開催している「自らつくっていくことの楽しさを伝える」アートイベントのこと。同年代で創作活動を行う仲間たちとともに、ひとつの空間をつくりたいと考えたことが始まりだった。
開催趣旨は3つ。
①若手で創作活動をしている人どうしの交流の場を提供すること。
②参加型のイベントにすることで、つくるたのしさを発信すること。
③奈良らしいイベントを追求すること。
このイベントを通して、それぞれ違うジャンルの人と出会う機会が生まれ、刺激にもなった。また地元のお店や住民との交流も促進され、老若男女問わずいろいろなものを共有することができた。自分たちで発表の場をつくり、地元から発信していこうと決心した。

2曲目はジャズナンバー「テネシーワルツ」。1回目はオリジナルの三拍子で。2回目は「こんちくしょう!」な感情を込めて四拍子で。同じ曲だが、それぞれに異なる「表情」が生まれる。誰がどんなふうに歌うかで違う顔を見せてくれる。これも歌のおもしろさ。

ひとまちレポート 未来につながる空2

<生まれたときから歌が好きだった>
親戚が集まるときにはいつも歌っていた。「うまいねえ」と言われるのが嬉しくて、他人が笑顔になってくれることに喜びを感じた。
「大きくなっても歌いたい」と思うようになり、高校2年生からスクールへ。そこでジャズに出会う。アドリブの魅力に取りつかれた。いかに自分のオリジナルで歌っていくか。難しかったけれど、自分だけの表現ができたときに「うまいね」と言われるのがまた嬉しくて、だんだん楽しくなっていった。それがきっかけで、一から曲をつくることを始めた。

3曲目は、初めてつくったオリジナル曲「水」。もとになった曲「Lovin’ you」を織り交ぜながら演奏。
大学を卒業後、一度は就職したが、本格的に歌に取り組みたいと思い退職。今は両親の経営するカフェを手伝いながら活動を続けている。
「歌垣」という名前の由来は、古代人が恋の和歌を歌い合う行事。自分の気持ちを歌にのせる。その想いを引き継いで奈良から歌っていきたいと考えた。ステージに立っているときも一人じゃない。かつて一緒にやっていたメンバーや応援してくれている人も含めて、みんなが「歌垣」。

<みんなで奈良の歌をつくって歌いましょう>ひとまちレポート 未来につながる空3
学生たちと一緒に曲づくりに挑戦。テーマは「私の好きな奈良」。
それぞれが思いつくまま、紙にキーワードを書いていく。
「平城京から見た空が好き。空に包まれた様な感覚」
「普通の生活の中で観光ができる」
「派手ではなく素朴」
「国宝がたくさん」
「鹿がいっぱいいるところ」

それぞれが感じる奈良の魅力を歌詞に取り入れ、即興で曲をつくる。できあがった曲には、学生たちもコーラスで参加。歌いながら奈良の魅力を再発見し、それを共有していく。同時に、今日ここに集まった人たちはきっと彼女のファンになったに違いない。

5曲目「あなたの歌」、そして最後の曲「空」。

 
<私の歌がみなさんとの架け橋になるように>
だから、ホームページのタイトルは「おはしで歌垣」。
「空」も収録されているニューアルバム「ならそら」が、7月7日にリリースされた。Youtubeで視聴が可能なプロモーションビデオには、奈良市街地にある58ヶ所の店舗など、そこで働く人々や風景が登場する。そしてアルバムの販売は、ネット配信を一切行わず、およそ40ヶ所の地元店舗で行う。一方で、リリースライブもまちのあちこちで計画中だ。地域の人々から応援を受け、世界に向けて発信する。歌垣・吉田智江の小さな一歩は、そんな表現者と地域の新しいあり方を示している。

ひとまちレポート 未来につながる空4

<未来に繋がる空。私はここから歌い続ける>
近い将来、彼女の取組みが実を結ぶことを、心より楽しみにしている。

「おはしで歌垣」→ http://www.geocities.jp/hanaya_yoshida/tomoe.html
「やさしい光」プロモーションビデオ


▼やまもとあつしさんのブログ
『移 山 倒 海』
http://kentikugeinin.jugem.jp/

<奈良ひとまち大学・歌垣の巻。>
http://www.aalabo.com/?day=20110625